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珍渦虫の正体と特徴・繁殖の仕方・紫色の靴下と呼ばれる理由

更新日:2020年08月28日

世界を広いと感じるときは、自分の知識の底を知った時です。ヨーロッパの海底に珍渦虫(ちんかちゅう、ちんうずむし)という、謎の生物がいます。この珍渦虫は脳も生殖器持たない奇妙な生体の持ち主で、近年その正体が解明されたと言われています。

珍渦虫の正体と特徴・繁殖の仕方・紫色の靴下と呼ばれる理由

世界初の珍渦虫の幼生の観察に成功したのは、筑波大学の中野裕昭助教授です。中野氏は元々ウミユリという棘皮動物の研究をしていました。ヒトは脊索動物門に属しています。これと進化的に近いのが、中野氏が研究している棘皮動物門です。これに半索動物門と、ヒトが所属する脊索動物門は新口動物と言われています。

これらは、受精卵となり細胞分裂がおこる過程で、口よりも肛門が先にできる生物のことです。2003年に珍渦虫は新口動物だという論文が発表されました。先述しましたが、珍渦虫は肛門がありません。これに、興味を抱いたのが、筑波大学の中野裕昭助教授です。

珍渦虫の幼生の観察

珍渦虫の繁殖期の冬(繁殖シーズンは判明しているようです)に、スウェーデン沖の海底で見つけた珍渦虫を実験室に持ち込んで、飼育・観察します。そして、珍渦虫の幼生の観察に成功しました。なんと、珍渦虫の卵の確認もできました。

しかし、どのような過程で受精卵が発生したのは不明とのこと。しかも、せっかく見つかった幼生も8日後には死亡が確認されました。

珍渦虫の幼生についてわかったこと

現在、中野助教授は下田臨海実験センターという、筑波大学の施設でスウェーデン沖から持ち帰った珍渦虫のデータ解析と、従来行っていたウミユリと平板動物門の研究を行っています。スウェーデン沖で採取した生殖可能な珍渦虫をこの実験センターに持ち帰り、飼育したところ9個(9匹?)の幼生が得られました。

珍渦虫の幼生の確認は世界で初めてのことで、その幼生はなんとわずか5日ほどで成体とほぼ同じ構造になることを確認しました。今まで、珍渦虫の幼生を確認できなかったため、成体過程を観察できたことは、今後の研究の大きな飛躍になります。

そして、気になる珍渦虫の幼生についてですが、珍渦虫は幼生の時の方が「納得する」な体をしています。その納得する理由として、消化管がない極めて単純な体をしているとのことです。

珍渦虫の幼生の情報はいろいろあるようです。

珍渦虫の幼生が消化管がないという単純な体をしている「つくばサイエンスニュース」からの情報で、ネットで検索してみると、中には珍渦虫の幼生は完全な消化器や肛門もあり、足や中枢神経もあるという情報がありました。

このような情報はソースが不明なものだったので、今回は「つくばサイエンスニュース」からの情報を紹介します。珍渦虫の幼生の大きさはおよそ0.23㎜で、体中に生えた繊毛を使って泳ぎます。また、幼生はかぐや姫なみの成長するのですが、成長に必要なエサは食べないことがわかりました。

珍渦虫の幼生は生命活動にも成長にも必要なエサを食べない不思議な生物です。

珍渦虫が紫色の靴下と呼ばれる理由

スウェーデン沖、もしくはスカンジナビア半島の内海である、バルト海辺りしかいないと思われていた珍渦虫ですが、2016年にアメリカの深海でも発見されています。発見したのはカリフォルニア大学・サインディエゴ校のスクリップス海洋研究所です。発見された珍渦虫は4種類もありました。この発見までは、1属2種類のみ知られていました。

元々12年前にも珍渦虫の新種が発見されていました。モントレー湾の海底を二枚貝をさらっていた時に発見されました。発見された珍渦虫の新種は、その外見上の特徴が脱ぎ捨てられた靴下のようで、冗談交じりに「紫色の靴下」と呼ばれることになりました。

2016年に発見された珍渦虫の新種の一つは、今までの大きさである3㎝前後より、6倍~7倍もある20㎝という大きさで、本当に靴下のような大きさです。アメリカの深海にも珍渦虫がいることわかり、日本の深海にもまだ見つかっていない珍渦虫がいる可能があります。

チュロスとも呼ばれています

紫色の靴下と呼ばれる珍渦虫は他にもいろんな呼び方があり、靴下ワームはもちろん、研究者の中にはチュロスや、チュロス珍渦虫とも言われています。なんでも、表面のヒダがチュロス記事に似ているからという理由ということです。

一応、珍渦虫はタンパク質でできているので食べれないことはないですが、この生物自体が何を食べてできているのかも不明な生物なので、正直食べてみたいとは思う人はいないでしょう。

珍渦虫のライフサイクル

単純な体を持つ珍渦虫のライフサイクルは、ひたすら繁殖をするというものに見えます。生殖器がないため、有性生殖が可能とは思えません。だから、より良い個体や子孫を残すということもできないでしょう。そして、目がないので、どうやってエサをとるのかも不明です。

そもそも脳がないので、意識がないということになります。お腹が空いたこともわからないということです。珍渦虫を見ていると、繁殖を繰り返すというのが、生物の原始的なライフスタイルなのでしょう。この珍渦虫そのものが単純な生命体として生きているので、原始的なライフスタイルなのも納得はします。

しかし、脳がないということは意識がないと言うことで、好きなこともわからず、ただ繁殖を繰り返す生命が珍渦虫です。何をもって進化をしなかったのかとても不思議です。しかし、進化をすることは生命にとって良いことなのかは全くわかりません。人間が決めつけることではないでしょう。

珍渦虫は何になる?

進化を放棄したように見える珍渦虫ですが、もしかしたらこれから進化をするの可能性はあります。珍渦虫は進化の枝分かれをする初期段階にいる生命です。これから、何にでもなれるということです。暗く寒い海底でその時を待っているのでしょうか。

地球があるうちに進化をするかはわからないですが、珍渦虫の進化は人間にとって長い時間となるでしょう。

進化論を信じますか?

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初回公開日:2017年12月11日

記載されている内容は2017年12月11日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
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