Search

検索したいワードを入力してください

航空力学上「飛べない」クマバチは飛べるのか・ピーターパン理論

更新日:2022年04月11日

「本来なら飛べない」と信じられていたクマバチ。昆虫が非常に高度な原理で飛び回っていることは今や常識ですが、昔は気合で飛んでいると解釈され「不可能を可能にする」シンボルとして知られるようになりました。今回は、そんなクマバチについてのまとめです。

航空力学上「飛べない」クマバチは飛べるのか・ピーターパン理論

「ピーターパン理論」とは、ディズニーアニメに出てくるピーター・パンの有名なセリフ「飛べるかどうかと疑った瞬間から、永遠に飛べない」にちなんだ理論で、「信じればきっと叶う」「飛べないのは、飛べないかもしれないと思っているから」という前向きなメッセージです。

このセリフは、2015年に開かれた国際会議の開会挨拶で、日銀総裁の黒田東彦氏が金融政策に不可欠なのは「前向きな姿勢と確信」という意味で引き合いに出したことでも注目されました。

しかし、ピーターパンは本当に「信じれば必ず飛べる」と言ったのでしょうか。物語ではウェンディやジョン、マイケル、犬のナナも飛んでいますが、結論から言えばピーターパンは人間が飛べない理由を説明しているだけに過ぎません。人間は「飛べない」のではなく、飛ぶ必要のない存在です。そして、「飛べない」ことに不足感を抱いています。

クマバチが飛べないと言われていても飛べる理由

ずっと長い間「飛べない」と考えられていたクマバチですが、イギリスの科学者オズボーン・レイノルズ(Osborne Reynolds)にちなんだ「レイノルズ数」流体解析の研究によってついにその飛行原理が明らかになりました。

「流体」とは、液体や気体、プラズマなど個体以外の物質全般を差すもので、力を加えることで運動を続ける「ニュートン流体」のほか、「弾性」という特徴を持った「粘弾性流体」があります。液体は圧力で流れることはありませんが、気体は「圧縮性」という特徴があるため圧力によって体積が変化します。

解明されたのは1990年頃

飛べないはずのクマバチが飛べる理由は、飛行機と違って翅が動くことに加え、空気の粘度を利用しているためです。クマバチが翅を上から下へと高速で振り下ろすたびに、ネバネバした空気に渦が生じ、揚力が生じています。

再び翅を振り上げる時には、他の昆虫と同じように翅を立てます。また、八の字に動かすことでホばリングも可能です。飛べないどころか、人間が理解できないほど高度なテクニックで飛んでいたということです。

レイノルズ数

飛べないように見えるクマバチが飛ぶのは、その小ささに秘密があります。人間にとって空気はほとんど感触のない存在ですが、わずか2センチのクマバチにとってはネバネバしたもので、そんな空気を「慣性力」と「粘性力」との比で定義するのが「レイノルズ数(Reynolds number:Re)」です。

レイノルズ数の概念が初めて紹介されたのは1851年(江戸嘉永3年)のことですが、流体力学の計算法として応用されるまでにはさらに時間が必要でした。現在では、クマバチは飛べないとジャッジした航空力学など、さまざまな分野で利用されています。

飛べないはずのクマバチも飛べる

いかがでしたか。今回は、飛べないはずのないクマバチがなぜ飛んでいるのか?という素朴な疑問についてまとめました。その答えは、飛べないどころか「クマバチが飛べる原理を、人間が知らなかっただけ」というものです。

私たちは、実際に飛んでいるクマバチでも「本来は飛べない」と否定したり、とりあえず精神論で何とかしようと試みたりする傾向があります。

クマバチから人間へのメッセージは、「信じれば飛べないものだって飛べる」ではなく「飛べないと信じなければ、飛べるのが当たり前」でした。クマバチの例は、他にも原理が発見されていないばかりに「飛べない」と思い込まれていることがたくさんあることを示唆しています。

そして私たち人間も、クマバチのように小さな羽でもしっかり空気を掴んで自由に世界を飛び回りたいものです。

初回公開日:2017年12月20日

記載されている内容は2017年12月20日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。

Related